本研究は、既存の従来型特別養護老人ホーム・老人保健施設の改修事業を対象として、そこに建築計画的な立場から関わって改修プランの作成に携わるとともに、その前後における入居者の生活や施設スタッフの関わり方を調査することによって、その改修プランの有効性や問題点、施設運営の変化とその意味などを明らかにすることを目的とする。さらにそれを施設にフィードバックしていくことによって、それぞれの施設の環境の質の改善に寄与することを目指している。その結果を基に、改修型のハード・ソフト両面にわたる知見を得ようとするものである。 調査は主に、2箇所の改修された事例(特別養護老人ホーム)を対象に継続的に行い、施設スタッフのケア行為に与える影響や効果、入居者の生活の様子に与える影響や効果について、分析を行った。その際、改修直後とそれから1年後という時間の経過に伴う変化について注目し、ユニットケアを目指した環境の変化に対して、適応の視点からも分析を行った。主な調査内容は、ケア方針の概要や入居者属性を運営側へのヒアリングによって確認した後、入居者の生活調査とケブスタッフの介護行為調査を実施している。結果は以下の通り。 (1)小規模化という物理的な環境の変化は、確かにスタッフと入居者との距離を縮め、個別のコミュニケーションや生活援助を行いやすくなったという結果に結びついていたが、基本的な介護方針やスタッフー人一人の意識までを大きく変えることに面接結びつくわけではない。とくに改修の場合、生活やケアを継続させながら介護方針を変えていくことの難しさがある。 (2)実際の改修に至るまでに、入居者全体を小規模にグルーピング化しながらユニットケアを試行錯誤的に導入していた施設では、改修後に比較的ユニットケアに近いケアが行われていた。ただし既存の環境の限界が改修後の環境に強く影響を与えており、理想的なケア環境とするには多くの課題が見出される。 (3)単に小規模なだけでなく、その中でさまざまな場所の選択肢が用意されることも重要である。
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