これまでに報告されている諸資料を収集し、建替えを行った同潤会アパートの事業手法・開発規模・戻り入居率等の一覧、再開発年表を作成した。詳細調査として現在建替え中である清砂通アパートを選定し、議事録の閲覧・アンケート調査・聞き取り調査・座談会を行い、居住者個々の戻り入居と転居の分岐の時期や要因の解明、仮住まいの問題点について分析した。 清砂通アパートの建替え期の居住者の概要は、所有者が約6割、共有権利者が2割、借家人が2割で、家族構成は単身居住者が4割、世帯主が60才以上である世帯が6割をしめた。再開発後の意向は、居住者の48%が戻り入居を行い、半数以上が転出する予定である。転出者の過半は借家人で、借家人だけを見ると95%が転出した。ただし所有者も含めて当初から転出を決めていた者は17%で、大半は当初、戻ることを考えていた。16年余りに及ぶ事業の経過のなかで、資産価値の減少、高齢化によるローン対象年齢の超過から転出を余儀なくされていった。転出要因は経済的理由も多いが、時間の長さや家族との同居などもほぼ同数の要因となっている。また高齢者の要因として2度の引越の苦労を敬遠したものが目立った。 仮住まいを調査した結果、他の事例では広さや賃料で決定される傾向が強いなか、白河3丁目(1-4号館)では同じ町会内への転居が多い。これは祭りなど町会行事への参加を継続したいという意向から積極的に同町会内で仮住まい先を探している。その結果、地域生活が持続し、孤独感を感じている者が少なかった。一方もう一方の事業は規模が約4倍あり、号館によっては号館長の先導でイベントが実施されているものの、従前に意識化せずに行えていた緩やかな日常的なネットワークは断絶しているように伺えた。仮住まいにおいて居住者の多くは家賃等の経済的問題が優先し、コミュニティの持続の重要性は意識化されていない。地域生活を継続する意味を事業者や居住者にアピールする必要がある。 次年度の予備調査として新制度第一号の建替え事例のコーディネーターに講演をいただいた。
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