研究概要 |
1)同潤会アパートの建替え経緯:同潤会アパートの一連の建替え事例のなかでこれまで明らかになっていなかった山下町,平沼町,三田アパートについて土地・建物登記簿を閲覧し,時期や建替え手法,開発主体の特定を行った。山下町・平沼町アパートについては開発主体・管理主体が把握できたことから,聞き取り調査を行い,アパート管理時の状況や建替えに至るまでの経緯を明らかにした。 2)建替え事例の検証:柳島アパートについては,まず建替え時(1996年竣工)の権利変換状況を整理した。他の同潤会アパートと比較すると,事業期間が最も短く,戻り入居率も92%と高い。戻り入居者のうち91%が従前従後で権利形態を継続していた。次ぎに,現在,戻り入居者と新規入居者の関係性について調査した。その結果,従前の町会活動が継続され、その一方で新規入居者と戻り入居者の交流を図るために新たな行事も発案され,組織も戻りと新規居住者で構成され,良好な関係が築かれているよう見受けられた。新規居住者に対する手引き書や新規居住者の町会への取り込み方には他の事例へ汎用可能な点が多々見いだせた。 3)法改正の影響:最近の事例として大田区の萩中住宅を調査した。その結果,区分所有法改正による号棟単位の決議の撤廃,団地内一括建替の決議要件が加えられた点は決議上有効であった。マンション建替円滑化法による都の都営住宅の斡旋は立地が現況を考慮しておらず,効果を上げるには立地に対する配慮が必要である。住宅金融公庫が行った高齢者向け返済特例は増床希望者に利用されているため制度の目的とずれが生じていた。また当事例からは,建替えを迎えた住宅では高齢者の世帯が多く,さらに世帯間には経済的格差がかなり大きくなっている。双方に対応した住戸バリエーションの計画は居住の継続に有効に働いていた。仮住まい先として一括借り上げによる集団の仮住まいは,集会室の設置も加わり,居住の継続の面で有効であった。
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