都市部では用地確保の難しさから保育所を集合住宅や他の公共施設と複合させて設置する事例が多く見られる。施設複合にあたっては、併設施設との交流が図れる、住民サービスの向上が図れる等のメリットがある一方、十分な専用の園庭が取れない、落下物の心配がある等のデメリットもある。一昨年度までの研究により、こうした複合型の保育所には公営住宅・公団住宅などの公的住宅と複合されているものが多いこと、住宅との複合は保育園側から見てメリットを見出しにくいということなどが明らかになった。この結果を受け、昨年度は保育所を複合施設として有する住宅団地の全住民を対象とし、保育所を含む団地内施設環境に関する意識調査を行った。調査結果より、住民の35.1%が保育所について団地の住環境を考える上で重要な施設であるとの認識を持っていることが明らかになった。保育所の存在は「団地に活気がもたらされる」「小さな子どものいる若い世代の入居が期待できる」と評価されている。また、67.8%が保育所の地域住民への開放を「良いこと」と認識しており、34.2%が行事などに参加することで子どもたちと交流を持ちたいと考えていることが明らかになった。現状では住民と園児との交流行事は行われていないが、こうした行事を実施することにより保育所と地域住民との関係性を良好にしていくことができるという可能性が示された。本年度はこれらの結果をもとに、住宅団地内にある保育所等の子どもの施設・施設利用者・保護者・団地自治会に対しヒアリング調査・訪問観察調査を行い、団地という環境の子ども施設への適合性、団地住民および自治会と子ども施設との関係性について検証を行った。その結果、団地空間は子どもの遊び空間として優れているという評価が得られ、子ども施設の設置場所として団地が有効であること、子ども施設と団地自治会の連携により団地に賑わいを創出できることが確認された。
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