本研究は、文化的・社会的背景が異なるエスニックタウンの再開発に影響を及ぼす要素の抽出を目的とした国内外の調査分析を行った。 国内においては、東京圏の外国人の現況分析を踏まえて、「1都市再編におけるエスニックグループの社会的統合に関する考察」に、在日南米人(主に日系ブラジル人・ペルー人)を対象に群馬県大泉町と神奈川県健康地域での南米系商店におけるアンケート調査と南米系商店の立地分析により、日系ブラジル人居住者の行動圏の分析考察を踏まえて、「2エスニックバックグランドを持つコミュニティの生活・行動に関する考察」に、横須賀と沖縄を対象として「3米軍基地周辺地区の都市開発」についてまとめた。 国外においては、日本の現況との比較対象として、ヨーロッパの規模の異なった都市のエスニックコミュニティ等を対象として選定(8都市15地域)して調査を行った。また、移民・難民を踏まえたコミュニティ再生施設であるBromley by Now Center(ロンドン)にてヒアリング調査を行った。国外の調査方針としては、特定の地域を絞り込み綿密な調査を行うよりも、エスニックコミュニティの外来者に対する明示性や受容性の評価という視点を持ってエスニックコミュニティを数多く訪問し、国内調査編にて導き出されたキーワード「ソーシャルミックス(社会的統合)」・「ローカリティ(地域限内特定事象等)/グローバリティー(標準・一般化事象等)」について、調査地域の明示性・恒常性に関わる"モノ"と心理性(受容性等)・イベント性に関わる"コト"という点から各都市データマトリックス(資料編:分析マトリックス参照)を作成し、各都市について考察を行い、「4エスニックコミュニティの現状と展開」にまとめた。
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