研究課題/領域番号 |
16560557
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
増田 達男 金沢工業大学, 環境・建築学部, 教授 (70125095)
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研究分担者 |
谷 明彦 金沢工業大学, 環境・建築学部, 教授 (80308577)
永野 紳一郎 金沢工業大学, 環境・建築学部, 教授 (40329371)
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キーワード | 大火 / 延焼 / 防火 / 木造密集市街地 / シミュレーション / 金沢 / 城下町 / 藩政期 |
研究概要 |
本年度は藩政期に最も大火が多く発生した卯辰山山麓の町家群とその周辺地域を含む城下町北部の全域について延焼シミュレーションを適用した。昨年度も部分的に同地域の町家密集地域の分析を行ったが、範囲が限定的であったため、藩政期の大火を充分に再現するまでには至らなかった。さらに、本年度は樹木データを加えている。 鎮火後の延焼範囲は、史料に記録された範囲と、ほとんど同一であった。すなわち藩政期の大火を、シミュレーションは、ほぼ忠実にトレースしたことになる。ただし、記録の延焼範囲を超えて燃え広がる事例も見受けられた。記録では、町家群の広がりがボトルネックに狭くなる位置で延焼が止まっており、破壊消防等の活動が推察された。そこで、破壊消防を想定してシミュレーションすると、ほぼ忠実にトレースすることができた。 この外、(1)寺院の境内や武家屋敷の庭など広い空間および境内林や武家の屋敷林などの樹木は、延焼を妨げる点。(2)延焼が拡大するほど延焼速度は速くなる点。(3)6m/sの風速に対し、13m/sの風速の場合は、延焼速度が極端に早くなる、等の知見が得られた。 近代において防火性能が高まった基本的要素は、板葺が瓦葺に替えられたことである。ソフトウェアの制限上、近似的なシミュレーションを行った結果、建物の密集地域や近接範囲では、延焼速度が遅くなるだけで、延焼そのものは広がり続けることが観察された。 現代においてはさらに、防火構造に変えられたことによって、延焼速度は少なくとも5倍程度に遅くなった。ただし、風下側や延焼範囲が広がって火勢が増すと、防火構造の家屋群でも延々と燃え続けた。 すなわち、現代においてもなお、素早い消防活動の必要性を示唆している。 以上、空間配置や植樹、防火建築の配置等によって防火効果を得る手がかりが得られた。
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