研究概要 |
安全で快適な建築や都市を設計、評価する上で重要な、空間と発話の関係に関する知見を得るため、以下の研究を行った。 1.仮想空間として再現する建築・都市空間の選定および予備実験 街路網が不規則でわかりにくい密集市街地である、川崎市中原区武蔵小杉駅前を仮想空間として再現することとした。再現に先立って、武蔵小杉駅前で、単独の被験者がマイクやアイカメラを装着し、区役所への経路を探索する予備実験を実施した。被験者の発話や注視行動、および実験後のヒアリング結果などから、この地域の道がわかりにくい要因などを明らかにした。 2.仮想空間の構築 街路網が不規則でわかりにくい密集市街地の街路網を、VRML言語で記述した壁面、路面、階段によってモデリングした。また、現地で撮影した建物等の壁面の写真を合成してテクスチャを作成した。モデリングした壁面にテクスチャを貼り付けることにより、密集市街地を仮想空間として再現した。 3.構築した仮想空間における集団の探索行動実験 構築した仮想空間の中で、集団が協力しあいながら、駅から目的地(区役所)を探索する実験を行った。実験はマルチユーザ型仮想空間システムであるFreeWalkで行った。 集団を構成する各被験者は各自の計算機の前に座り、仮想身体であるアバタを介して同じ仮想空間に参加する。計算機の画面には、自分のアバタの目から見た仮想空間の風景が表示される。各被験者はキーボードにより自分のアバタの位置や向きを操作し、仮想空間内を歩行する。被験者はマイクとヘッドホンがついたヘッドセットを装着し,これを用いて他の被験者と会話する。またCCDカメラが被験者の表情を撮影し、その被験者のアバタの頭部前面に表示する。これにより、互いに他の被験者の表情を確認できる。なお実験中は、各被験者が操作している計算機の画面、および発話をビデオデッキによって録画、録音する。
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