現代社会において、子供を取り巻く環境の変化は、情報機器の普及とその個別化により複雑さを増し、子供に関する諸問題の深刻化を招いている。本研究では、家族のコミュニケーションの減少に対処し、子供の成長を育む家庭環境を空間的側面から支援することに関して追及するため、情報機器の住生活・住空間への影響について考察した。 子供の問題及び情報機器に関する文献調査(研究実施計画<以下、計画と略す>(1))を行い、問題の複雑性及び進化の急速性を確認した。この調査は今後も継続し、3年間の研究の基礎とする。住宅雑誌掲載の住宅を対象とする"居室の配置計画・情報機器設置場所"の調査・分析及び、広島市域住民を対象とする"居室の配置計画・情報機器と携帯電話の使用状況"のインタビュー調査(計画(2))により、居室計画には、プライバシーと子供室-リビング間の繋がりを両立させる計画の増加が認められ、情報機器は親世代の専有から家族の共有に変化し、リビングへの設置の動きのあることを確認した。携帯電話の使用状況には性差が認められ、男子は使用場所として子供室を選択する傾向にある。内容に関する子供から親への伝達は、メールの場合が多く、性差及び居室の配置計画に影響を受けている。一方、マナーやルールの重要性の認識度に比べ、情報機器の使用による家族のコミュニケーションへの影響は明確に認識されていない。親世代は住生活においてTVの視聴・食事・会話等の行為を重要視し、これらの場面における子供の携帯電話使用に対する抵抗感の大きい事が判明したが、子供自身の抵抗感と使用状況との関係には、今後更に分析・検討を加える必要があり、抵抗感以外の分析項目を再検討し、情報機器の使用による空間認識への影響を探る実験(計画(3))を17年度に深めて行うこととしたい。他分野へのヒアリング調査(計画(4))及び社会現象より、子供の問題への情報機器の影響はあるものといえる。計画(5)については、投稿中(こども環境学会)及び投稿準備中(日本建築学会)である。
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