現代社会において、子供を取り巻く環境の変化は、情報機器の普及とその個別化により複雑化し、子供に関する諸問題の深刻化を招いている。本研究は、家族のコミュニケーションの減少に対処し、子供の成長を育む家庭環境への空間的側面からの支援を追及する為、情報機器の住生活・住空間への影響を考察した。子供の問題及び情報機器に関する文献調査(研究実施計画の計画・方法の<以下、同と略す>(12))は、前年度と同様に継続し3年間の研究の基礎とした。社会の情報化による公私空間の混乱は、子供の諸問題の要因の一つであると考え、子供の情報機器の使用と住空間及び空間認識との関係をみることを殊に目途とし、同(7)(8)(10)関連の調査・実験を行った。内容については、他分野の研究機関へのヒアリング調査(同(9))の結果を含め、今年度改めて検討した。調査は、情報機器の使用頻度が高いもの等を情報機器依存であるとみなし、子供室の専有性・孤立性と情報機器依存、情報機器依存による生活(主に家族のコミュニケーション)への影響、情報機器依存による空間認識への影響、等々を調査内容とし、(1)子供室の孤立性による情報機器依存への影響、(2)情報機器依存による空間認識(特に、携帯電話依存による公空間認識への影響)等の可能性、(3)家族のコミュニケーションへの直接的な影響の有無、等々を確認した。また、子ども室は年齢の上昇と共に孤立性の高まる傾向があり、住空間の計画に考慮が必要であることが伺えた。実験(今年度予定の一部)は、模型等による確認を行った後、情報機器の使用による空間認識への影響について実施した(同(8))。情報機器依存により、仮想空間と現実空間の認識が同一化する傾向が得られた。実験方法を再検討し、更に研究を深めることとしたい。同(13)については、こども環境学会に審査付き研究論文1編、日本建築学会関東支部に口頭発表論文1編を発表した。
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