研究初年度(平成16年度)に一部更新した高エネルギーガンマ線吸収法による密度測定装置を使用して、Te高濃度側の共晶組成(15at.%Te)を中心としたSi-Te系半導体液体のガンマ線吸収計数の温度・組成依存性を測定した。この結果よりモル体積を求め、また、超音波測定による音速測定を行い、これらの結果を組み合わせることによってSi-Te系半導体液体の構造変化とそれによって誘起される濃度揺らぎを調べた。SiとGeはと元素の周期表で同属元素であり、またTe高濃度側の共晶組成(15at.%Te)を中心とした相図は極めて類似しているにもかかわらずSi-Te系半導体液体の液体-液体転移の様相にはGe-Te系の転移と際立った相違が存在することを確認した。Si-Te系の転移のクロスオーバー温度の組成依存性は共晶組成近傍で最大となり申請者が導出した熱力学な関係式よりこの組成で構造転移により誘起される濃度揺らぎが最も発達することを示すことができた。結果の一部は日本物理学会2007年春季大会「Si-Teの液体-液体転移、19pXF-2」(2007年3月)で発表し、論文として取りまとめ中である。 また、多価金属元素液体における液体-液体転移の存在を系統的に調べるため、多価金属元素、合金の比熱と音速を系統的に測定した。これらの結果より平衡蒸気圧下の過冷却状態を含んだ融点近傍の温度領域で液体-液体転移を示す元素が周期表上の特定の位置に存在することを示した。この論文はこの分野の代表的な研究者、F.Sommer教授(Max Planck Institute for Metals Research in Stuttgart)退官記念論文集(Int.J.Mai.Res.(formally Z.Metallkd.)97(2006)4 371-376に収録されている。
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