研究概要 |
ブリッジマン法により,純Mg, Mg-0.1Al, Mg-0.1Anの単結晶を作製し,77K〜473Kの範囲で[11-20]引張試験を行った.その結果,いずれの場合も非底面すべり系として{11-22}<-1-123>2次錐面すべりにより降伏した,純Mgは77Kから293Kの範囲で降伏応力が上昇する正の温度依存性を示し,293Kから473Kにかけて,降伏応力は急激に低下した.この2次錐面すべりでは,Alを0.1at%添加した場合,全温度範囲で降伏応力が低下した.これに対しZn添加の場合,293K以下では降伏応力が上昇した,すなわち2次錐面すべりに対する合金添加の影響はそれぞれ異なることがわかった.また純Mgを<0001>圧縮すると,2次錐面すべりにより降伏するが,その値は引張の2倍以上高い値を示し,シュミット則が成り立たないことがわかった.純Mg単結晶の薄片を平面曲げにより繰返し引張圧縮を加えた結果,圧縮過程で{10-12}双晶が発生すると,双晶面にそってき裂が進展し,容易に破断することがわかった. この2次錐面すべりの(c+a)転位の運動過程を,分子動力学シミュレーションにより解析した.転位芯に<0001>引張および圧縮歪を加えた結果,従来明らかでなかった,<0001>引張における転位の運動過程が示された.またミクロサイズ結晶における応力-歪曲線を求めた結果,圧縮のほうが転位の運動開始応力が低いことがわかった.(c+a)転位には2つの芯構造をもつことは知られていたが,本研究の結果,2つの部分転位からなる構造の場合,降伏応力は極めて低く,結晶の温度上昇により急激に低下することが示された.このシミュレーションにより得られた値は,Mgの引張試験の降伏応力とほぼ一致した.すなわちマクロスケールの実験結果をミクロスケールによる解析結果より説明できることが示唆された.
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