1.単準結晶の作成:高純度のAl、Pd、MnをAl_<72>Pd_<20>Mg_8の組成になるように秤量してアーク溶解によりボタン状インゴットを作成し、それらをアルミナルツボに入れてブリッジマン炉により単結晶の作成を試みた。15mmφで60mm長の単準結晶が成長し、単準結晶から内部摩擦測定用の棒状試料を切り出した。 2.倒立ねじり振子型内部摩擦装置の改良:準結晶試料を1000℃以上の高温で測定可能にするため、試料支持棒、試料取り付け治具等をすべてモリブデンで作成した高温試料取り付け治具を特注し、年末に納入された。 3.DMAによる測定結果:倒立ねじり振子による内部摩擦測定に先立ち、既設のDynamical Mechanical Analyzer(使用温度最高600℃)を用いて、Al-Pd-Mn単結晶試料を-150℃〜600℃の範囲で片持ち梁のモードで内部摩擦測定を行った。周波数は0.1、1、10、100Hzで測定した。その結果、緩和強度が0.2に近い非常に大きな緩和ピークが600℃付近で観測された。この緩和ピークの活性化エネルギーは約5eVで、振動数因子は10^<-30>sと極めて小さな値であった。単原子の緩和の振動数因子は10^<-13>s程度であるから、この緩和過程は複数の原子が協力的に動くことによる複雑緩和過程である。この緩和過程の機構として(1)フォノン・フェイゾンカップリングによって生じるフェイゾン緩和過程、(2)転位がキンク対形成またはジョグ対形成で律速されて運動するボルドニピーク的な機構の2つの可能性が考えられるが、今後、より詳細な検討により明らかにする計画がある。
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