研究概要 |
準結晶中には結晶にはないフェイゾンの自由度が存在し、フォノン-フェイゾン結合により準結晶に応力を作用させるとフェイゾン緩和によって応力緩和が生じる。それを内部摩擦測定によるメカニカルスペクトロスコピーによって検出し、フェィゾンダイナミツクスに関する知見をうることが目的である。ブリッジマン法で作製した2回軸方向に成長したAl-Pd-Mn正20面体単準結晶から棒状試料を切り出し、Dynamical Mechanical Analyzerを用いて高温で曲げモードの内部摩擦測定を行った。室温から約900Kまでの温度範囲で5K/minの速度で昇温し、振動数は0.1,1,10,100Hzの4種類で測定した。その結果850K付近にtanδ=0.1程度の非常に大きな緩和型ピークが観測された。この緩和の活性化エネルギーは5〜6eVで前指数因子は10^<-26〜33>sという値が得られた。またピークの幅は単一緩和のデバイピークに比べて3倍程度大きかった。ピーク温度の割りに大きい活性化エネルギーと通常の原子ジャンプの場合の10^<-14>sに比べて極端に小さな前指数因子の値はこの緩和がいわゆる複雑緩和であることを示している。すなわち、この緩和ピークの機構は数個の原子の独立な熱活性化ジャンプによって生じるフェイゾン緩和であると解釈される。緩和ピークが極めて大きいことから、フェイゾン-フォノン結合弾性定数はかなり大きな値であることが明らかになった。単準結晶の方位を変えた試料について測定を行い、定量的なフェイゾン-フォノン結合弾性定数を求めることが今後の課題である。
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