研究概要 |
Ti_<50>Ni<50-x>Cu_x。(10≦x≦20)合金のマルテンサイト変態を西播磨の放射光施設SPring-8のX線回折装置を用いて研究した。この合金系では、x≦15以下ではB2-B19(斜方晶)-B19'(単斜晶)と2段のマルテンサイト変態が起こることが知られているが、それ以上のCu濃度で2段変態を起こすかどうかは不明である。特にx=20の濃度で2段変態が起こるかどうかは、Q^<-1>=0.2という極めて高いこの合金の内耗の機構を知る上で重要である。まず予備的なDSC測定並びに電気抵抗測定では、2段目の変態は検出されなかった。しかしながら、試料を冷却しながら行ったin-situのx線回折実験では、2段目の変態の存在を直接的に検出することができた。これはSPring-8での放射光の輝度が極めて高いため可能になったのである。次に温度を変えた回折実験の結果から2段目のB19-B19'変態の開始温度も決めることができた。上述した電気抵抗測定では、変態の温度ヒステリシスは現れないので、常識的には2段目の変態は現れないという解釈になるが、電気抵温度曲線には変曲点が現れている。この変曲点と上記X線回折実験から2段目の変態開始温度は、192Kと決定できた。この他B19,B19'両マルテンサイト相の格子定数を温度の関数として精密に測定し、その温度依存性に、興味深い結果を得ている。一方上述したQ^<-1>=0.2という驚異的に高い内耗broad peakのピーク温度は約250Kと2段目の変態開始温度よりずっと高い所にある。従来broad peakの生ずる原因は、2段目の変態に起因すると考えられて来たが、上記結果はこの考えを否定するものである。従って申請者らは、この極めて高い内耗の原因は2段変態にあるのでは無く、1段目の変態で生じたB19マルテンサイト中の双晶の応力下での可逆的な移動に起因すると考えており、これらの成果は、Scripta Materialia (in press)で発表されることになっている。Cu濃度が20%より低い合金に対してもほぼ類似の結果が得られている。
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