本研究では、生物の体内で無機物(バイオミネラル)が作られる機構を模倣して、セラミックスの形態を制御する方法の確立を目的とする。 今年度は、アルギン酸ゲル粒子内部に酵素(ウレアーゼ)を固定化し、ゲル粒子を基質(尿素)とアルミニウムイオンを含む水溶液に浸し、ゲル粒子内部でのみ酵素反応を進行させると同時に、酵素反応性生物(アンモニア)によってアルミニウムイオンを水酸化アルミニウムとして沈殿させた。 その結果、水酸化アルミニウムはゲル粒子内部にのみ沈殿し、ゲル粒子内部の空隙を埋めるような形態に析出した。この粒子を空気中で焼成したところ、アルギン酸は燃焼によって除去され、ゲルの気孔を埋めるように析出した水酸化アルミニウムは酸化アルミニウムに変化し、結果として極めて細孔径の揃った多孔質酸化アルミニウム粒子ができた。多孔質酸化アルミニウム粒子内の細孔径は、酵素反応時間や焼成温度によって0.1μmから0.01μmの範囲で制御することが可能であった。 同様の方法を水酸アパタイト粒子の合成にも適用したところ、この場合にはゲル内部ではなく、ゲル粒子表面を覆うような形態で水酸アパタイトが析出した。その結果、直径約1mmの中空水酸アパタイト粒子が合成できた。この粒子の直径を0.1mm程度に制御できるようになれば、ドラッグデリバリー担体としての応用が可能になるため、引き続き検討を継続することとした。
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