研究概要 |
立方晶リューサイト化合物の超低熱膨張化を目指す本研究課題において,本年度はNa置換量およびSi/Alモル比を制御した種々の組成を有するNa置換型ポルーサイト粉末の合成手法の確立,合成したNa置換型化合物の熱膨張特性,及び構造相転移の調査を行った.合成した粉末の結晶相の調査には粉末法X線回折試験(XRD),123〜1273Kの温度範囲での熱膨張特性および構造相転移の調査には粉末法低温・高温XRDを用いた.またNa置換型ポルーサイト格子内空間率は、室温での格子定数とイオン半径から算出した. 得られた知見を以下に示す。(1)種々の立方晶系Na置換型化合物(Al/Siモル比=1.0/2.0,Na/Csモル比=0.1/0.9〜0.3/0.7)が873〜1373Kの温度範囲での多段階熱処理によって合成できた.(2)Na置換量の増大によって,ポルーサイトの急激な熱膨張(室温〜473K)が抑制され,室温〜1273Kの温度範囲で熱膨張率が減少することを見出した.(3)合成した組成の異なるNa置換型化合物はお互いに室温での格子定数(1.3671〜1.3675nm)がほとんど違わず,結晶系および格子定数を維持したままでNa置換型化合物の空間率を41%(CsAlSi_2O_6)から45%(Cs_<0.7>Na_<0.3>AlSi_2O_6)へ増加させることができた.(4)Na置換型化合物はポルーサイトと同様に構造相転移(正方晶〜立方晶)を起こしたが,Na置換量の増大とともに構造相転移温度は低下することが分かった.(5)室温以上でのNa置換型化合物の熱膨張率は構造相転移温度の低下に伴って減少することを見出した. このようにNa置換型ポルーサイトが低熱膨張化したのは,多段階焼成法を利用したNa^+イオン置換によってポルーサイトのナノ空間が効率的に拡大され,構造相転移の制御が可能なソフト構造が形成されたためと考えられた.
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