研究概要 |
本研究では,立方晶ポルーサイト(CsAlSi_2O_6)をテンプレートとし,その結晶構造内のCsサイトに着目して,このサイトをイオン半径および価数の異なるカチオンで部分置換することにより,骨格構造を変えることなく,Al/Si組成比を変化させつつ結晶構造内のナノ空間率を制御する手法を確立し,それに基づいて創出した「ソフト構造」をもつ化合物の合成を試みている.本年度は,アルカリ土類金属部分置換型ポルーサイト化合物の粉末合成と熱膨張特性の測定・解析をおこなった. 具体的には,多段階焼成法によりCsAlSi_2O_6のCs^+イオンを2価カチオンのアルカリ土類金属(Ba^<2+>)で部分置換したアルカリ土類金属部分置換型リューサイト化合物を多段階焼成法により合成した.その結果,ポルーサイト量論組成CsAlSi_2O_6の単位格子にある16個のCs^+イオンのうち5個のCs^+を置換できた.この化合物の化学組成はCs_<0.688>Ba_<0.156>AlSi_2O_6で表され,Cs^+イオンが30mol%以上置換されたことを示している.このようなBa^<2+>置換型ポルーサイトは,ポルーサイト量論組成CsAlSi_2O_6に見られる"室温からの急激な熱膨張"がみられず,ほぼ直線的な熱膨張を示した.さらに,Al/Si比=1.0/2.0から0.8/2.2となるようSiの割合を増大させたテンプレートCs_<0.8>Al_<0.8>Si_<2.2>O_6のCs^+をBa^<2+>で置換したCs_<0.6>Ba_<0.1>Al_<0.8>Si_<2.2>O_6は直線的な熱膨張を示したまま,低熱膨張化することが分かった.その平均熱膨張係数(室温〜900℃)は約1.0×10^<-6>K^<-1>となり,アルカリ土類金属イオン置換という試みによって低熱膨張性を示す新規な化学組成を有するポルーサイト化合物を見出すことに成功した.Ba^<2+>イオン置換によってCs^+イオンを減少させると,単位格子にナノ空間が増大する.この増大率はCs^+と同族のアルカリ金属による置換よりも効果的である.本研究結果はこのようなナノ空間の導入が低熱膨張化を促進できることを示唆していると考えられる.
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