研究概要 |
立方晶ポルーサイト(CsAISi_2O_6)化合物をテンプレートとし,その結晶構造内のCsサイトに着目して,このサイトをイオン半径および価数の異なるカチオンで部分置換することにより,骨格構造を変えることなく,Al/Si組成比を変化させつつ結晶構造内のナノ空間率を制御したCs-不足型ポルーサイト:Cs_1-xAl_1-xSi_2+xO_6,Na-導入型ポルーサイト:Cs_1.0NaxAl_1+xSi_2-xO_6,Na-置換型ポルーサイト:Cs_1-xNa_xAISi_2O_6の合成に多段階焼成法を用いることで成功した。ただし,組成制御範囲は狭かった。 合成した立方晶系ポルーサイト化合物の熱膨張係数CTE(473-1173K)は結晶構造内のAL/(Si+Al)比,空隙率,Cs^<+>イオンとNa^<+>イオンの配列の影響を受けていることを結晶構造内のナノ空間率の制御により解明した。また,本研究手法のナノ空間率制御による「ソフト構造」の観点から,新規なパラメーターとして[AL/(Si+AL)](1+(Ssiteoccupancy/Wsiteoccupancy))を導入することで,合成したすべてのポルーサイト化合物のCTEが相関できることを見出した。この新規なパラメーターを利用することで,立方晶系ケイ酸塩化合物の超低熱膨張化のモデルとこれらの化合物の低熱膨張化の指針を提案できる可能性が見出せた。 一方課題として,合成したNa-置換型ポルーサイトの熱膨張特性が,Na置換量に関係なく化学量論型CsAISi_2O_6とほぼ同じ熱膨張率を示すグループと,Na^-置換量にともなって473K以上の熱膨張率が小さくなる傾向を示すグループに大別された。この原因はポルーサイト構造内でのCs^<+>イオンとNa^<+>イオンの配列の相違によるものであり,再現性よく個々の粉末を合成するための合成法を再検討する必要がある。
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