研究課題/領域番号 |
16560598
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研究機関 | 独立行政法人海上技術安全研究所 |
研究代表者 |
千田 哲也 独立行政法人海上技術安全研究所, エネルギー・環境評価部門, 部門長 (80344240)
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研究分担者 |
村上 健児 独立行政法人海上技術安全研究所, 構造材料部門・材料研究グループ, グループ長 (60112067)
川越 陽一 独立行政法人海上技術安全研究所, エネルギー・環境評価部門・環境分析研究グループ, 主任研究員 (90415810)
足立 幸志 東北大学, 大学院・工学研究科機械電子工学専攻, 助教授 (10222621)
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キーワード | アルミナ / トライボロジー / 塑性変形 / 電子顕微鏡 / 摩耗メカニズム / 微細構造 |
研究概要 |
高い耐摩耗性が期待されるアルミナセラミックスについて、摩擦面での塑性挙動に着目し、塑性変形と亀裂発生の微視的メカニズムの解明を試みた。アルミナセラミックスのボールオンディスク式摺動摩耗では、摩擦条件によって、比摩耗量が10^<-6>mm^3/Nm以下の摩耗がきわめて低く表面粗さが小さく保たれる状態(マイルド摩耗)と、10^<-3>〜10^<-5>mm^3/Nmの摩耗粉を多量に発生させて粗面化する摩耗(シビア摩耗)が起きる。これらの摩擦面の微細構造の違いを明らかにし、マイルド摩耗からシビア摩耗への遷移メカニズムを解明することを目的として、微細構造と表面状態(平滑面と粗面)の異なる焼結アルミナのディスクとボールを用いて、荷重、温度、摩擦距離を変化させた摩耗試験を実施し、マイルド状態の発現領域を調べた。また、マイルド摩耗状態の摩擦面とシビア摩耗状態の摩擦面について、断面を含む試料を作製して透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った。 室温においては荷重が40N以下ではマイルド摩耗で、微細構造にはあまり依存しなかった。荷重を50Nとすると粒界破壊によるシビア摩耗となった。この遷移は、試料を加熱すると100℃と200℃の間で軽荷重でもシビア摩耗に移行した。マイルド摩耗状態の摩擦面の表面近傍は、層状構造となっており、最表層にはアモルファス状の物質が観察され、電子線回折によるとγ-アルミナに近い結晶構造を示した。この物質は母材のα-アルミナより低硬度であり、摺動面で潤滑機能を示すことが示唆された。シビア摩耗の摩擦面は、表面に微細粒で非常に大きなひずみを有する層があるが、これはα-アルミナであった。母材より低硬度であることにより潤滑性を示す表面層を保持できる摺動条件において、非常に摩耗量が低く、かつ平滑な表面が得られるマイルド摩耗状態が発現すると考えられる。
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