研究課題
ホウ酸ガラスB_2O_3は、種々の機能性ガラス材料の主要なガラス形成物質として、幅広く利用されている。B_2O_3はBの周りのOは3配位平面型構造をとるが、金属酸化物の添加に伴い一部のBは4配位四面体型に変化する。この基本構造単位の変化がガラス形成や物性値の変化の基礎と考えられている。いま修飾金属酸化物の組成をxで表し、加えた酸化物イオンがすべて4配位型構造の形成に寄与すると仮定すると、4配位型Bの割合N_4は、x/(1-x)で表される。実験から決められたN_4は、x組成の小さい領域でこの式によく合うが、xが大きくなるにつれて下方に大きく偏差することが知られている。赤外分光実験によると、アルカリ酸化物の添加の場合は金属イオンの半径が大きくなるにつれて偏差が大きくなるのに対し、アルカリ土類酸化物の場合は逆になる結果が得られている。一方、NMR実験から求められたN_4の挙動は、より複雑で上記とは一致せず対立している。特にアルカリ土類系ホウ酸ガラスの系統的な構造情報が絶対的に不足しているため、アルカリ系とアルカリ土類系ホウ酸ガラスの局所構造の差異は未確定であり、物性を支配する因子も不明である。特に、アルカリ土類系ホウ酸ガラスの構造解明に関しては、殆ど実験がなされていない。このために、その差異と支配因子を解明する。平成17年度では、以下の研究項目を実施し、成果が得られた。1)アルカリならびにアルカリ土類系ホウ酸ガラスを基本とするガラス試料を試作して、ガラス形成が可能な組成領域を探索した。2)アルカリならびにアルカリ土類系ホウ酸ガラスについて、パルス中性子回折実験を行い、4配位型Bの割合N_4の挙動を中心としたBの周囲の局所構造の変化を精密に解析し、金属イオンの半径が小さくなるにつれてx/(1-x)からの偏差が大きくなる結果が得られた。3)アルカリ土類系ホウ酸ガラスについて、分子動力学計算を行い、パルス中性子回折実験結果と同様の結果が得られた。4)アルカリならびにアルカリ土類系ホウ酸ガラスについて、修飾金属酸化物天下に対する4配位型Bの割合N_4の挙動を比較したところ、Kamitosらの赤外分光実験と同様の結果が得られた。5)BaO-B_2O_3ガラスについて、Ba、BそしてOのXAFS測定から、Bの周りのO配位構造やBa^<2+>イオンから成るガラス修飾カチオンの局所構造を調べた。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
The 5^<th> International Conference on Borate Glasses, Crystals and Melts. Italy. July 10-14. 2005 (Phvs. Chem. Glasses) (To be submitted)