研究概要 |
高温形状記憶合金を開発するために、Tiと白金族金属を組み合わせたB2型金属間化合物XTi(x=Pt, Ir, Rh, Ru)に着目した。PtTiは、1000℃近傍でB2相からB19相に変態することが確認され、レーザー顕微鏡内で試料温度を上げ下げすることによる表面観察により、変態時の表面が起伏することから、マルテンサイト変態を起こしていることが明らかとなった。PtTiにIrを添加した合金についても、相変態が観察され、低温相がPtTiと同じB19相であることがわかった。また、Irを添加するとマルテンサイト変態温度が1200℃まで上昇した。RhTiはB2からL10への相変態を起こしていることがわかり、透過電子顕微鏡による観察により、微細な双晶が多数形成しており、マルテンサイト変態の可能性が高いことが明らかとなった。RuTiについては現在観察中である。 (Pt, Ir)Tiの機械的性質についても調べた。室温で圧縮変形させた試料の熱膨張を調べたところ、変態点付近で形状回復するのが認められた。形状回復は組成に依存し、Pt-25Ir-50T(at%)が最も大きな回復を示した。また、室温から変態点以上の様々な温度で圧縮-除過試験を行ったところ、Irが12.5から25at%入った合金は変態点温度以下、マルテンサイトのバリアント再配列時にしばしば観察される曲率の異なる曲線が観察された。また、Ir添加量の多い合金では除過時に超弾性による歪みの回復が観察された。形状記憶効果があるかどうかについては現在検討中であるが、可能性は高い。Ir添加により、母相B2相もマルテンサイト相も固溶強化されることも確認できた。Ir添加した合金の変態温度は1200℃近く、これらの実験結果は、(Pt, Ir)Tiが1000℃から1200℃の温度範囲で動作する高温形状記憶合金としての可能性が高いことを示唆している。
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