研究概要 |
高温形状記憶合金を開発するために、Tiと白金族金属を組み合わせたB2型金属間化合物XTi(X=Pt,Ir,Rh)に着目した。PtTiは、1000℃近傍でB2相からB19相のマルテンサイト変態することが確認された。PtTiにIrを添加した合金についても、相変態が観察され、低温相がPtTiと同じB19相であることがわかった。Irを添加した(Pt,Ir)Tiのマルテンサイト変態温度が1200℃まで上昇した。低温の構造が明らかでないIrTi及びRhTiの低温相の結晶構造とマルテンサイト変態により形成される双晶組織を詳細に調べた。その結果、Ir-richの組成では、高温側の結晶構造であるB2構造の110方向を100とするような格子を取る斜方晶であることがわかった。また、Ti-rich側ではB2構造を示し、B2相から斜方晶へのマルテンサイト変態温度はTi濃度が上昇するに従って、下がることが示された。IrTiにもPtTi等の化合物と同様に微細な双晶組織が観察され、双晶面は{-111}であった。RhTiについてはB2からL1_0の相変態が確認された。 (Pt,Ir)Tiの低温相は、PtTiと同様基本的にはB19構造を有することが明らかとなったが、透過電子顕微鏡で観察すると、B19構造では説明できない超格子反射が観察された。これらの超格子反射がどのような構造により現れるのかを明らかにするために、HAADF-STEM法を用いて、観察を行った。その結果、PtあるいはIrの原子位置と、Tiの原子位置を明確に区別することができ、場所によって周期の異なる積層構造を持つことが明らかとなった。 IrTiについて、熱膨張測定を行うことにより、形状記憶効果を調べたところ、形状回復が観察された。(Pt,Ir)Tiについては、圧縮試験により評価を行った。変態点以上に一度加熱してから試験温度に温度を変化させ、負荷-除荷試験を行ったところ、変態点温度以下で、徐荷時に完全に歪みが回復する擬弾性効果が現れることが明らかとなった。他の形状記憶合金ではあまり観察されない挙動であり、高温における制振材などの応用が期待される。
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