研究概要 |
PZT薄膜のマイクロ・マシンの機械素子への応用としてはその用途にもよるが、3〜10μmの厚さの薄膜を必要とする。例えば、マイクロ・スキャナーと原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバー等のマイクロ・アクチュエーターへの応用には、3μm厚さのPZT薄膜が要求される。この範囲の厚さのPZT薄膜を造るのは従来のデポジション技術で極めて困難である。本研究では、プロセスの短時間、低温化を目指して、ゾルーゲル法とレーザーアブレーション法のハイブリッドプロセスでテンプレート結晶粒成長により、良好な圧電特性を有する3μm程度の厚さのPZT薄膜の作製プロセスを開発することを目的とする。本年度は、ゾルーゲル法とレーザーアブレーションのハイブリッドプロセスにおいて,テンプレート結晶粒成長に及ぼす基板温度の影響を検討した。まず、Sol-gel法を用いてPt/T/SiO_2/Sの基板上に厚さ0.15μm程度の(111)面配向のPZT膜をコーティングした。その後、1層のPZT膜をコーティングした基板を420℃,460℃と550℃に加熱しながら、その上にレーザーアブレーション法で約1μm程度の厚さのPZT薄膜を作製し,薄膜の結晶構造,微細組織と電気的特性を調べた。その結果、基板温度420℃の場合では,レーザーアブレーションで蒸着したPZT薄膜はアモルファスとなるが,基板温度460℃と550℃の場合では,レーザーアブレーションで蒸着したPZT薄膜は完全にペロブスカイト相となることが分かった。しかし,基板温度460℃の場合では30nm程度のペロブスカイト相の結晶粒が集団的に分布し,多くの隙間が観察される。基板温度550℃の場合では,ペロブスカイトの結晶粒が均一に分布し,緻密な薄膜が得られた。 これらの結果から,基板温度をコントロールすることにより薄膜の微細組織が制御できることを明らかにした。さらに,ゾルーゲル法のアニール温度を下げるために,マイクロ波加熱プロセスを検討しました。また,ゾルーゲル法のシード層の(100)面配向を制御するために,導電性酸化物LaNiO_3薄膜の下部電極への応用も検討した。
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