裏当て材を用いずに、安定な裏ビード溶接を行うために、45度開先を持つ板厚12mmの母材を用いて、種々のルートギャップにおいてスイッチバック溶接の基礎実験を行った。これを、溶接方向の正面に設置した高速度ビデオカメラおよびトーチに固定されたCCDカメラにより撮影する。撮影されたビデオ画像をコンピュータに読み込み、コマ送りで画像を調べる。これにより、溶滴移行現象の実験的解析および母材のルートエッジへの入熱方法を検討し、ルートギャップの幅に対するロボットモーションおよびパルス電流波形など適正な溶接条件を求める。すなわち、アーク長を短くし、トーチ前進時にルートエッジにアーク熱および電極ワイヤからの溶滴が与えられるように、電流パルスピーク幅、ワイヤ送給速度およびトーチモーションを決定する。さらに、1ms毎の溶接電流、電圧およびワイヤ送給速度を計測し、これらとアーク長および電極ワイヤ突出し長さの関係を考察する。 ワイヤ突出し長さおよびアーク長の応答は非線形であるので、微分方程式を用いて記述することは困難である。そこで、熟練技術者の知識と経験を用いて行われた基礎実験データを用いて、ワイヤ突出し長さおよびアーク長を出力するニューラルネットワークモデルを構築する。これを行うために、定電圧特性の電源およびパルス溶接電源を用いて、基礎実験を行い、溶接電流、溶接電圧およびワイヤ送給速度との関係を検討した。電極ワイヤの溶融現象は電流(陽極点の電圧降下との積の効果)、ワイヤ突出し長さ、ジュール熱(電流の2乗項)の効果、ワイヤ送給速度が影響する。これに基づき、突出し長さを推定するニューラルネットワークの学習データを構築した。
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