研究概要 |
陽極接合継手への接合時と逆方向の電圧印加による継手欠陥の生成は,継手に用いるガラスの成分中のナトリウムを銀と置換することで抑制できることがこれまでに明らかになった.この銀置換処理を行ったガラスとシリコンの陽極接合継手に逆電圧を印加すると,接合時に継手界面近傍のガラス中に形成される銀イオン欠乏層からガラス側に向かって特異な形態の銀析出物が生成する.この銀析出物は継手欠陥の生成には結びつかないものの継手の用途によってはガラス中の電流漏れなどの原因になる可能性がある.また逆にガラス中に導体を分散させる方法として利用できる可能性もあり,いずれにしてもこの銀析出物の形態を制御できることが望ましい.そこで継手の接合・逆電圧の印加の際の条件が析出物の形態に与える影響を検討した.析出物のサイズは接合時間,逆電圧印加の際の温度,逆電圧の大きさに強い影響を受け,それぞれ接合時間の延長,逆電圧印加温度・逆電圧そのものの低下によって粗大化し,また継手界面の単位面積中の数密度は減少する.この原因を探るため,逆電圧を印加された継手界面を透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ,逆電圧印加開始後まず銀イオン欠乏層中に局部的な銀の侵入が生じ,その後その侵入点から銀析出物が生じることが見出された.欠乏層中の銀侵入組織の形成頻度はガラス中の銀の移動のしやすさに影響される.接合時間の延長,逆電圧印加温度・逆電圧そのものの低下はいずれも銀侵入組織の形成頻度を下げ,結果銀析出物の粗大化,数密度の減少をもたらすことが明らかになった.またこれまで実験に用いてきたガラス(Corning 7740)とは組成の異なるガラス(Corning 7056)の継手においても同様の方法で逆電圧印加による欠陥生成を抑制できることを確かめ,この場合も継手界面近傍には銀の析出物が生じるがCorning 7740に生じるものとは形態の違いがあることを見出した.
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