研究概要 |
本研究では,半導体レーザによる結晶制御クラッディング技術の確立を目的として,溶融部内の凝固形態,優先凝固成長方向および単結晶条件に関する理論的検討を行った.また,Ni基単結晶超合金に対して表面溶融を施し,溶融池内の組織観察をすることにより単結晶化状況を調査し,解析の有効性について検証した.さらに,肉盛部の結晶制御および単結晶化可能領域の拡大について検討を加えた、熱伝導解析とデンドライト成長方向に関する理論解析から,溶融池内は平滑界面,セルおよびコラムナーデンドライトで構成され,大部分はコラムナーデンドライトで構成されると予測した.また,溶融池内の優先凝固成長結晶の遷移を計算した結果から,溶融池内中央部の大部分は[100]デンドライト,端部は[010]デンドライト,底部は[001]デンドライトによって構成されることを予測した.さらに,単結晶化条件について溶融池内部を温度勾配(G)/凝固速度(V)によって整理した結果より,溶融池内部の中央付近で最も多結晶化しやすいと予測した.これらの予測結果は実験結果と良好な対応関係が認められた.半導体レーザおよびTIGアークによって表面溶融を行った溶融池内は単結晶化が達成されている領域,溶融池内で異方向に成長するデンドライトが観察されるものの単結晶化が達成されている領域,ストレイ結晶が発生し多結晶化している領域の3つに分けることができ,入熱量の増加とともにストレイ結晶が発生しやすいことがわかった.また,この表面溶融の結果を踏まえ,レーザおよびアーク条件を制御することによりシングルパス肉盛部内も単結晶化できることがわかった.さらに,肉盛部の単結晶化可能領域を拡大するためには,マルチパスマルチレイヤー肉盛により単結晶化領域を拡大すること,および表面再溶融により最終層表面の多結晶化部を単結晶化することが有効な手法であると確認できた.
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