研究概要 |
本年度は、イオン伝導性セラミックスと金属の陽極接合可能条件を調べ、その接合機構を明らかにした。ここで、イオン伝導セラミックスとして、Naが可動イオンであるβ-アルミナ(Na_2O・11Al_2O_3)および8mo1%イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いた。各材料ではそれぞれナトリウムおよび酸素がイオン伝動を起こす。β-アルミナは、10x10x2mm、YSZは、10x10x3mmの板を用いた。また、金属には電極として用いられる厚さ2-6mmの純Alおよび純Agの板を用いた。イオン伝導体と金属を重ね合わせた後、真空中で温度および電圧をパラメータに接合可否を求めた。また、電流の時間変化を測定した。更に、走査および透過電子顕微鏡、分析装置により界面組織の観察を行った。 β-アルミナと純Alの系では、50V以下では接合しなかった。また、100v以上では部分的にスパークを起こした。陽極接合は、75V,673K以上の狭い領域でのみ可能であった。接合中に流れる電流は、最初は小さく、一且ピークを迎えた後、徐々に小さくなる傾向を示した。また、全ての接合条件で接合強度は数MPaと小さかったが、破壊は界面ではなく、β-アルミナ中で起きていた。また、界面近傍で破壊した部分には、Na組成は少なく、Al_2O_3と思われる層が形成していた。 YSZと純Alの系では、573K以上の温度、50V以上の電圧条件で陽極接合が可能であった。また、接合強度は最大で6MPaと小さかった。接合中に流れる電流密度は、低温、低電圧においては電圧印加直後減少しそのまま一定の値を保つ。しかし、温度および電圧の増加に伴い、減少した後に再び増加する傾向を示した。また、断面および破面観察から界面にAl, Zr, Y, Oからなるアモルファス構造と思われる反応層が確認できた。 YSZと純Agの系では、電圧を印加しない場合598K以下では接合できなかったが、印加することにより473Kまで接合が可能であった。接合中の電流密度は時間と供に増加した。これは、接触面積の増加が原因と考えられる。接合界面近傍では、YSZへのAgの拡散が確認できた。また、界面では、Ag_2Oの反応生成物が界面で架橋しているのが観察された。また、Agが表面拡散により界面の隙間を埋めることで接合すると考えられる。
|