研究概要 |
現在の高齢化社会を背景に,安全に長期間使用できるインプラント材の開発が進められている,メディカル電子デバイスの小型化は年々進んでおり,それと並行してマイクロ接合の必要性が高まってきている.たとえば心臓ペースメーカにおける電気回路にはNiやPt線の配線が必要な場合もある.昨年度は,メディカルデバイスとして古くから使用されているSUS304ステンレス鋼ワイヤおよびNiワイヤを抵抗マイクロ溶接し,その接合メカニズムを明らかにし,それに基づいてプロセスおよび継手性能の最適化を図った.本年度はメッキされた材料のマイクロ抵抗溶接性について検討した.メディカル電子デバイスにおいて使用される電気配線材料はメッキされることが多く,その溶接性に及ぼすメッキの影響は無視できないほど大きい. 金メッキNiワイヤのマイクロクロスワイヤ接合においてもメッキなしの場合と同様にナゲットは形成しない.接合プロセスは,(1)金めっき層の溶融または金/ニッケルのブレージング,(2)液相の排出,(3)固相接合,の3つの段階を経ることが明らかになった.また金メッキの溶接条件に及ぼす影響として,ブレージング効果が明らかになった.Au-Niがブレージングすることにより,継手の得られる最小臨界溶接電流を低下させることに成功した.また,機械的性質に及ぼす影響としては,フィレット効果が認められた.これは排出した液相が継手端部にフィレットを形成することにより,継手形状が非常になめらかになる.そのため,応力集中が緩和され,金メッキしていないニッケルワイヤ継手に比べて継手強度が大幅に改善された.
|