研究概要 |
各マスメディアで頻繁に取り上げられる少子高齢化社会問題.総務庁統計局国勢調査によると21世紀初頭には我が国における65歳以上の高齢者人口は総人口の25%以上になると予想されている.この高齢化社会の到来にともない,機能低下あるいは喪失した生体組織を人口材料で補完する機会が益々増加すると予測される.加えて,近年の電子デバイス関連のマーケット成長は目覚しく,その規模はわが国の基幹産業である自動車,鉄鋼産業をも凌駕すると予測されている.この両分野およびその境界領域が本研究のターゲットである. 本研究の目的は心臓ペースメーカー,カテーテル,ステントを代表とする医療用デバイスにおける安全で信頼性の高いマイクロ接合技術の確立である.溶接プロセスにはマイクロ抵抗スポット溶接を適用した.被接合材としては,電子デバイスに使われるニッケル細線および金メッキニッケル細線,加えて医療用インプラント材によく使用されるSUS304ステンレス鋼細線を用いた. 各種材料のマイクロ抵抗クロスワイヤ溶接において電流,通電時間,電極荷重の3大溶接パラメータが微細組織および機械的性質におよぼす影響について調べた.その結果,クロスワイヤ溶接メカニズムは以下の4つのステージで構成されていることが明らかになった.(1)通電前のワイヤの冷間変形,(2)通電開始直後のワイヤ表面層の溶融,(3)ワイヤの変形にともなう初期液相の排出(酸化皮膜の除去,(4)ワイヤ変形をともなう固相接合.これを元に通電開始時の電極荷重を制御することで接合部の組織を最適化することに成功した.また電気配線でよく使用される金メッキの影響についても調べた.金メッキがフィレットを形成することにより,継手性能が向上することを明らかにした.ステンレス鋼ワイヤについても同様のメカニズムであることを明らかにし,溶接後のδフェライトの生成が抑制されることを示した.以上より,マイクロ抵抗クロスワイヤ溶接が医療用(電子)デバイス作製の基礎技術のひとつとして十分適用可能であることを示した.
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