研究概要 |
1.チタン合金試験片の作製 供試材には室温で60%まで圧延したβrich(α+β)型チタン合金SP700(Al:4.50mass%, V:2.90, Mo:2.00, Fe:2.01, O:0.092, C:0.009, N:0.007, H:26ppm)を使用した.これは厚さ約6mm,幅約50mm,長さ約900mmの板材として入手した.供試材からねじり軸が圧延方向と等しくなるように平行部長さ22mm,平行部直径5mm,肩部R=2mmの肩付の丸棒を切り出し,ねじり用試験片とした.この試験片に750℃で10分間焼なましを行った.そして60%圧延ままの受入材と750℃焼鈍材の2種類の試験片を作製した. 2.チタン合金のねじり加工限度 受入ままの試験片を一方向に0.48回転(θ=0.137rad/mm,一方向ねじりR=+0.48)させると肩部の付近で破断した.また0.25回転させた後,逆方向に0.25回転(ねじり戻しR=+0.25-0.25)させると軸方向と平行な方向に小さなクラックが入った.750℃で試験片を焼なますと,一方向ねじりで1.24回転(θ=0.354rad/mm, R=+1.24)までねじり加工が可能となった.R=+1.24でねじり軸と垂直の方向に破断した.R=+0.5-0.5+0.5のねじり戻し加工をすると平行部に対して斜めに微小なクラックが入った. 3.硬さ試験,引張試験および組織観察 750℃で焼なました試験片(750℃焼鈍材)にねじり戻し加工R=+0.5-1を施した.750℃焼鈍材の硬さは323HV0.1であった.ねじり戻し加工したにもかかわらず,硬さは750℃焼鈍材と大きくは変わらなかった.硬さにはそれほど差が見られなかったが,R=+0.5-1は焼鈍材に比べ引張強さが約5.8%上昇し,全伸びが約12.4%減少した. 受入材を750℃で焼なました後ねじり戻し加工R=+0.5-1した試験片の表層部と中心部の組織には大きな違いは見られなかった. 4.まとめ チタン合金SP700にねじり加工を施し,次のことがわかった. (1)試験片に焼なましを行うことで一方向のねじり量を0.48回転から1.24回転まで2倍以上に増大できる. (2)ねじり戻し加工によって組織(中心部と表層部)と硬さ分布を大きく変えずに引張強さを約5.8%大きくできる.
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