繰返しねじり戻し加工を施し、傾斜組織とした工業用純チタンを用いて、そのねじり方法およびねじり量に及ぼす表面粗さの変化と高温引張特性について検討した。 1.供試材および試験片 供試材には工業用純チタン2種を用いた。ねじり戻し試験片および高温引張試験片には平行部断面が直径φ5mmの丸棒を用い、平行部長さを22mmとした。 2.繰返しねじり戻し加工した試験片の表面粗さ 一定量のねじり(+)後、逆方向へのねじり戻し(-)を連続的に繰り返すねじり戻し加工を、純チタン丸棒試験片に施した。比較のため一方向のねじり加工を施した試験片も製作した。ねじり戻し加工の加工ルートはR=±0.5、R=±1、R=+0.5-1+0.5およびR=+1-2+1回転の4種類として、ねじり量である総回転数(総比ねじり角)を種々変えて表面粗さ(最大高さ粗さ)を測定した。 ねじり前の試験片の最大高さ粗さはRz=12μm程度であったが、一方向ねじりでは総比ねじり角約0.5rad・mm^<-1>でRz=45μm程度と約4倍大きくなった。しかし、繰返しねじり戻し加工を行うと総比ねじり角の増大と伴なって最大高さ粗さは大きくなるが、その粗さ増大の程度は一方向ねじりより著しく小さくなる。繰返しねじり戻し加工の中でもねじりの繰返し数を大きくしたR=±0.5ほど総比ねじり角による粗さ増大の程度は小さくなった。 3.繰返しねじり戻し加工した試験片の高温引張特性 加工ルートR=+1-2+1で総比ねじり角2.28rad・mm^<-1>まで繰返しねじり戻し加工を施した試験片の高温引張試験を温度723〜973Kでひずみ速度7.2×10^<-5>〜7.2×10^<-3>s^<-1>の範囲で行った。比較のため81%冷間圧延したままの試験片の高温引張試験も行った。全伸びについては繰返しねじり戻し加工を行っても冷間圧延したままの試験片と大きな違いは見られなかった。しかし、再結晶温度直上の923Kにおける流動応力はひずみ速度が小さい約1×10^<-4>s^<-1>付近において繰返しねじり戻し加工を行った試験片のほうが冷間圧延したままの試験片より小さくなり、ひずみ速度感受性指数がm=0.3程度と比較的大きくなった。
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