本研究の目的は、レーザーを利用して新たなるニッケル多孔質金属の形成技術を開発することにある。多孔質金属材料は、気孔の形態、大きさ、量に応じて様々な特徴を有しており、その特徴を生かして超軽量材料、エネルギー吸収材料、振動吸収材料、防音材料、断熱材料、電極材料、フィルター材料、生体医療材料など、極めて広い応用展開が期待される魅力ある材料として注目されている。このような中でも、ニッケル多孔質金属は、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などの二次電池電極として使用されており、近年、その使用量が増大している。 このような背景のもと、本研究ではCADデータより得られた2次元断面形状に基づいて炭酸ガスレーザーをニッケル粉末層に照射し、断面形状に溶融・固化したニッケル薄層を積層することで、3次元のニッケル多孔質体の形成を試みた。 熱源には出力100Wの連続発振の炭酸ガスレーザーを使用した。操作パラメータとして、ビーム出力、ビームスキャン速度、ディフォーカス量を調整した。加工用治具にニッケル粉末を充填し、上部からレーザー照射を行った。ニッケル粉末を治具に充填する際、上部から押し固めることはせず、粉末表面を均すにとどめた。ニッケル粉末にレーザー光を照射し、1層1層積層していくことにより、細孔が多数存在する多孔質状の構造物を形成することができた。細孔径は、レーザー出力やビームスキャン速度に大きく依存していた。たとえば、ビームスキャン速度が低いと入熱過多となり細孔径は大きくなった。そしてビームスキャン速度の増加とともに細孔径はより小さなものとなったが、入熱量が少なくなるため強度的には脆いものとなった。レーザー出力の大小に対しても同様な結果が得られた。したがって、適切な強度を持つ多孔質体を形成するためには、操作パラメータの最適化が必要である。
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