平成17年度は鉄-10%銅合金について平成16年度に引き続き包晶反応・変態のその場観察実験を行った。観察は共焦点走査型レーザー顕微鏡と赤外線ゴールドイメージ炉を組み合わせた観察装置を用いた。平成16年度に整備した酸素ゲッター炉を用いて実験を行った。また、試料の酸化の程度を推定するために、ジルコニア固体電解質を用いて雰囲気ガス中の酸素分圧を測定する装置を設置した。これらの装置の改善を踏まえて、Fe-10%Cu合金の観察を実施した。観察では、試料を部分的に溶解後冷却させることにより16年度と同様の観察を行い、包晶反応が非常に短時間でおこり、固体と液体の界面にγ相が形成する様子を観察することができた。その後γ相は液体が凝固しつつ広がっていった。さらに、示差走査熱量計による相変態温度の測定も実施した。測定された相変態温度は従来の文献値と良く一致した。示差走査熱量計により決定した相変態温度と観察された現象より、観察中の温度を決定した。また、Fe-Ni系の合金についても同様の観察結果を得ていたので、この合金系については包晶反応・変態の観察結果のまとめを行った。鉄-ニッケル合金では急冷した試料をEPMAにより分析し、ニッケルの濃度分布を調べた。その結果は、ニッケルの濃度は、ほぼ状態図の示すとおりに、液層、γ相、δ相に分配されていることが明瞭に観察された。このことからも、高温における観察結果は包晶反応・変態であることが示された。また、鉄-ニッケル系の合金の変態の速度は鉄-炭素系に比べて非常におそいことが観察されたが、これはニッケルの拡散が炭素に比べて遅いためと考えられる。同様の考察を鉄-銅合金系にっいても実施した。
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