研究概要 |
木質系バイオマスおよび廃プラスチックと酸化鉄を混合し、1,400〜1,800℃の超高温に急速加熱すると、酸化鉄が還元されて金属鉄を生成し、同時にCOガスとH_2ガスを生成し、CO_2ガスを生成しない現象を見い出した。この時に生成する金属鉄中の溶解炭素濃度、金属的の形態と該混合物中の炭素/酸素原子比との相関を明らかにした。バイオマスを用いると鉄の融以下で、炭素濃度が上昇する、すなわち浸炭が起こり、したがって酸化鉄の還元反応がきわめて迅速であることを示した。プラスチックを用いるとこのような浸炭は鉄の融点以上でしか起こらない。このような浸炭現象の大きな差異は、バイオマスおよびプラスチックのガス化によって精製するチャーの結晶構造と密接な関連があり、結晶化度の低いチャーほど浸炭が容易に起こることを突き止めた。以上の複雑系化学反応に対して、熱力学解析を行い、多元系、不均一系の熱力学式を解き、生成物(金属鉄、固体炭素、酸化鉄、ガス)の生成割合、さらには生成物の組成、これらの温度依存性等々を熱力学計算によって求めることに成功した。さらにこの計算結果と実験値との比較により、この複雑・多元・不均一系反応が、統一した解釈のもとに解析できることを示した。本研究の結果、炭酸ガスを生成せずに金属鉄を製造するための条件を完全に把握することができ、同時に水素とCOガスを生成するが、炭酸ガスを生成しない条件をも明らかにすることができた。
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