研究概要 |
CdTe半導体は太陽光のエネルギー変換効率が理論上最大であり,太陽電池用半導体として着目されているものの,結晶化が困難であることと大きな結晶粒サイズが得られないことから,現状では低い変換効率の製晶しか得られていない.磁場中で結晶磁気異方性を持つ物質を電解する場合,結晶を配向させることができることがわかっている.結晶磁気異方性は六方晶金属に顕著に現れるので,立方晶であるCdTe結晶に対してはその効果は期待できないが,Cd, Teは六方晶であり,単体のCdあるいはTeを結晶配向させ,その上にCdTe結晶を電析させることにより,結晶化温度の低下と結晶粒の粗大化という変換効率の向上という観点から革新的な技術が期待できる. 本年度に得られた知見と実績を以下に示す. 1.CdTe半導体の結晶化温度は磁場の印加によって低下するが,CdおよびTe上に電析する場合はその効果がより顕著に現れる. 2.CdTe半導体の結晶粒サイズは磁場の印加ではほとんど変化しないが,数百個程度の結晶の集合体のサイズは磁場の印加により大きくなることがわかった. 3.Cdに対する結晶配向の効果はほとんど見られなかったが,Teは5Tの磁場の印加により結晶配向の効果が現れた. 4.強磁場下でのローレンツ力に起因する流動の影響により,電析表面が安定化し,平滑化することがわかった. 以上の結果の一部は,国際会議等で既に発表しており,今後,変換効率の測定を進めて,強磁場の効果を,結晶磁気異方性に基づく結晶配向,基盤の配向性と成長膜の関係,最終的には変換効率に対してまとめる予定である.
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