研究概要 |
本年度は高い抗菌性が一般的に認められる銀を数十μmオーダーのすずめっき鋼板上に数nm〜1μm程度,スパッタリングにより積層させ200℃から300℃にて加熱処理を行い合金化を図った.積層単相膜を電気炉中において200℃1時間,200℃2時間,300℃2時間加熱処理し,X線回折によりその表面皮膜を調べた。その結果,未処理の状態で最上部のAg層のみが検出されていたのに対し,熱処理が進むと共に,次第にAgとSnが相互に拡散することにより金属間化合物層(Ag_3Sn)や固溶体皮膜が形成された。この結果はAgスパッタリング膜が1μm,10nm,100nmの場合においてもほぼ同様の傾向が認められた。Snの融点以下200℃の処理温度では,固相間での拡散により二つの表面層の界面を中心としてSnとAgの金属間化合物皮膜が形成し,これが主要な表面皮膜として成長する。一方Snの融点以上では,Snが液相となるが,固相のAg原子がいち早く液相となった界面付近のすず相中に拡散し金属間化合物層を形成しこれが成長するこのようにして,Sn, Agの固溶体皮膜,Ag_5Sn皮膜も形成されると考えられる。 すべてのSn-Ag合金化めっき薄膜および積層めっき薄膜試料を形成した炭素鋼板の試験片を75%のエタノールで表面を消毒し、大腸菌バクテリア浮遊液を400μLのせ、直ちに滅菌したポリエチレンフィルムをバクテリア浮遊液上に被せた。その後、各試験片を滅菌したシャーレの中に移し、相対湿度99%以上の環境下で35℃、24時間保持した。ポリエチレンフィルムと試験片に付着したバクテリアを洗い出した菌液から100μL分取し、普通寒天培地に接種し,35℃で一晩放置した後、形成されたバクテリアのコロニーの数を数えた。これらの結果から熱処理した試験片は,すべて抗菌性を示すことが明らかとなった。
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