研究概要 |
環境負荷性とユーザーフレンドリー性を高めることは,まさに21世紀において重要な開発指針となるべき要素である。高齢化社会に向かいつつある我が国においては,とりわけ,抗菌性を有する材料が望ましい。このような背景から,生体関連の抗菌・抗カビ性の材料表面処理を追及する理由がある。抗菌性とか環境負荷性を低減する表面処理としてはいろいろなものが考えられるが,とりわけ本研究者は合金皮膜に着目し,これを形成させるプロセスを新しい角度から行い,その抗菌・抗カビ性を検討した.その根本には,環境負荷性の高い金属皮膜を,より環境負荷性が低い合金で置き換え,環境負荷性を低減させながら,同時にできるだけその特性を維持しようという考え方がある。従来の方法では,合金化と電析が同時に一つのプロセスで行われる利点はあるものの,電析条件を満足させるために,ある一定の化学種を用いなければならず,それが環境負荷性を再び高めたりする可能性がある。また電析条件を制御するのは一般にそれほど容易ではなく,同時に形成される皮膜は非平衡状態であることもしばしばで,これが製品として使用される際の変質につながる可能性もある。そこで,本研究者は熱処理合金めっき法(Heating Stacked Single Layers Process: HSSL Process)と呼ぶ,単相を積み上げるプロセスと熱処理による合金めっきプロセスを組み合わせた新しい合金めっき法を開発した。この方法により,食品加工関連に多用されるすずめっきに,抗菌性のある銀,銅を加えて合金化し,同時に耐摩耗性を付与する諸条件を明らかにした.これらの大腸菌に対する抗菌性を調べたところ,すずめっきが全く示さなかった抗菌性が銀,銅の添加により高められた.同時に硬度や耐摩耗性が,金属間化合物の形成により高められ,抗菌性を示す硬質皮膜が形成されることがわかった.
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