環状オリゴ糖の分子包接と吸着を利用した難分解有毒物質汚染土壌の除染手法の開発に関して、塩素系有機化合物のモデル汚染物質としてビフェニルを用い、以下の研究を行った。 1.ビフェニルと土壌およびビフェニルと各種活性炭の吸着平衡の測定と相関 炭素含有量約5%の「黒ぼく土」および各種活性炭を種々の濃度のビフェニル水溶液と混合し、溶液中のビフェニル濃度と土壌および活性炭に残留しているビフェニル量をガスクロマトグラフ、および分光蛍光光度計で定量分析して吸着平衡を測定した。黒ぼく土および活性炭へのビフェニルの吸着量はFeundlich式で相関することができた。浮遊活性炭の平衡吸着量は「白鷺」などの工業用活性炭の1/10、黒ぼく土への吸着量は更にその1/10であった。 2.修飾シクロデキストリン添加によるビフェニル溶解促進効果 ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)とメチル-β-シクロデキストリン(MT-β-CD)を用いてビフェニルの溶解度促進効果を測定し、安定度定数を求めた。ビフェニルの溶解度はMT-β-CDを用いることによって著しく促進された。 3.シクロデキストリン水溶液と浮遊活性炭による土壌吸着ビフェニルの脱着速度の測定 ビフェニルを吸着させた黒ぼく土(以下汚染土壌と呼ぶ)とシクロデキストリン水溶液および浮遊活性炭を混合し、汚染土壌からのビフェニル包接脱離と、ビフェニル包接複合体の活性炭吸着分離を同時に行った。浮遊活性炭は平衡吸着量は通常の活性炭に比較して低いが、土壌との分離が容易であるため、ビフェニルの除去効率は他の活性炭に比較して約30%高くなった。
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