流体にある種の高分子や界面活性剤を加えると、流れの抵抗が激減する(水を流した場合の20〜80%)現象は抗力減少効果として知られており、流体輸送の省エネルギー技術として実用化が進められている。一方、効果自体の発現理由については良く分かっていない。これに対し当該研究では流体中で高分子糸や界面活性剤が形成する棒状ミセルが不均一に存在することに着目し、このことが流れの乱れを制御することにより抗力減少効果が発現すると考えて研究を進めている。また上述の系にナノオーダーの微粒子が存在する場合は、抗力減少効果に増減が見られることを実験的に確認し、この現象の理解と新規用途の可能性について検討している。 本年度は高分子としてポリアクリルアミドを使用し、これに33nm〜3μmのアルミナ粒子を添加してレオロジー測定を行った。この結果、ナノオーダーの粒子によって高分子溶液の弾性率が増大することが分かった。界面活性剤による抗力減少効果については、3種類の界面活性剤を選定し、その濃度、対イオンとの割合、防錆剤の添加、温度などの条件を様々に変え、抗力減少効果を測定した。同時に音叉型振動粘度計による局所粘度測定、レオメーターによる平衡流動特性、粘弾性特性、剪断誘起状態へのジャンプの有無、剪断速度の昇降による粘度のヒステリシスの有無を測定、さらに伸長粘度計(本研究で試作)で伸長粘度を測定した。抗力減少効果の実験とレオロジー測定の結果から、現象の発現については、1.粘弾性の有無は直接関係しない、2.低流速域の粘度の増加は抗力減少効果を阻害する、3.剪断誘起状態へのジャンプの有無は関係しない、4.粘度のヒステリシスの有無は関係しない、ということが判った。さらに伸長粘度の測定より、伸長粘度とゼロ剪断粘度の比(トルートン比)が抗力減少効果の発現に相関があることが明らかになってきており、さらに溶液の調製条件や温度条件を増やしこれを検証している。
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