研究概要 |
本研究では、貧溶媒を含む超臨界流体の急速膨張法による高分子微粒子製造法を提案し、この方法を利用したマイクロカプセル製造法について検討した。特に本年度は、1)高分子に対して貧溶媒で水中の急速膨張による粒子の形状制御および2)高速撹拌技術を利用した高分子とナノ粒子の複合化について検討した。 これまで検討されていた急速膨張法では、超臨界二酸化炭素に対して高分子の溶解性を向上させる添加溶媒が急速膨張後に生成される粒子同士の癒着の原因となり、癒着の顕著な粒子が生成されていた。一方、貧溶媒中に急速膨張させる手法では、急速膨張による生成したサブミクロンから数ミクロンオーダーの高分子液滴が、貧溶媒中で界面張力の作用により安定した状態で凝集するため、球形状の高分子粒子を形成できることがわかった。大気中に急速膨張させた場合に比べ、添加溶媒による粒子同士の癒着もほとんどない。 また、ナノ粒子含有マイクロカプセルを化粧品やコピートナーなどに利用する場合、生成されたマイクロカプセル内部のナノ粒子の含有率および分散状態の向上が大きな問題となってくる。本研究で生成したマイクロカプセルの断面をTEMにより分析したところ、ナノ粒子が凝集した状態でマイクロカプセル内に内包されていることがわかった。また、マイクロカプセル内へのナノ粒子の含有率の向上には急速膨張前の高圧容器中の撹拌が顕著に影響し、撹拌速度の増加にともない内包率も向上することがわかった。この現象は、超臨界流体中でのナノ粒子の分散状態が撹拌により大きく変化したためと考察される。さらに、本研究では、高濃度のナノ粒子含有高分子マイクロカプセルを製造するために、メカニカルシール機構を有する高圧高速撹拌装置を試作した。高分子微粒子内部にナノ粒子を分散するには、超臨界二酸化炭素を含む混合物系に高速撹拌により大きな剪断力を加える手法が有効である。通常の高圧容器内部の撹拌には電磁誘導式の撹拌装置が利用されるが、撹拌器内部に磁石を有するため数千rpm以上の高速撹拌を行うと発熱し、撹拌装置の破損の原因となる。また、撹拌効率的に行うために、円筒型の撹拌翼を使用した。高圧容器内部の壁面と円筒状の筒(撹拌翼)との間で剪断力が発生し、ナノ粒子の効率的な分散が達成できる。試作した高圧高速撹拌装置を用いて酸化チタン(平均一次粒子径35nm)を内包する高分子微粒子の製造実験を試みた。急速膨張操作を行うことで、数μmサイズの球形状の微粒子を製造することができた。さらに、高圧高速撹拌装置(撹拌速度10,000rpm)を用いて製造した高分子微粒子の酸化チタンの内包状態を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察したところ、粒子内部には酸化チタンが高濃度で内包されていることがわかった。
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