研究概要 |
蛍光半導体として注目されている酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子の合成法には様々な方法が提案されているが、いずれの方法においてもナノ粒子は容易に成長・凝集し、ナノ粒子としての特性が失われる。本研究は、三次元網目構造のゲルネットワークを反応場とするZnOナノ粒子の新しい合成法を検討することである。昨年度は、両親媒性のN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)ゲル中で合成すると生成したZnOナノ粒子の安定性が著しく向上すること、ゲルの合成組成(架橋剤濃度)によってZnOナノ粒子の粒子径が制御できることを明らかにした。今年度は、ゲルネットワーク自身が加水分解触媒機能を持つゲル中でのZnOナノ粒子の合成について検討した。まず、触媒機能を持つモノマーとして、第三アミンを持つN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)に着目してその触媒作用を検討した。酢酸亜鉛のエタノール溶液にDMAPAAを加え50℃以上に加温すると白色の沈殿物が生成し、この沈殿物のX線回折パターンを調べた結果ZnOの生成が確認された。次に、ラジカル重合法でDMAAとDMAPAAの共重合ポリマーを合成し、ポリマー状態での触媒作用について検討した。この共重合ポリマーの場合もZnOの生成が認められたが、モノマー状態のときと比べて反応性は低下した。さらに、架橋剤にN,N'-メチレンビスアクリルアミドを用いてDMAAとDMAPAAの共重合ゲルを合成し、これに酢酸亜鉛を含浸させてゲル中でのZnOの合成を試みた。その結果、DMAPAAをネットワークに固定すると反応性は著しく低下した。以上の検討結果から、DMAPAAモノマーはZnO合成のための加水分解触媒として有効なことが見いだされた。また、DMAPAAをゲルネットワークに直接固定すると反応性が低下することからネットワークにグラフトする等の工夫が必要なことが明らかになった。
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