研究概要 |
本研究の目的は、新たなクリーン燃料として注目されているジメチルエーテル(DME:CH_3OCH_3)の燃焼初期段階の反応機構の解明と重要な素反応について定量的に考察することである。実験には、無隔膜型衝撃波管を用いて反射衝撃波背後で温度1300〜1800K、圧力1.3〜2.7atmの範囲で測定を行った。試料気体は、高純度DMEと酸素との混合気体をアルゴンで大希釈して使用した。測定には1)炭化水素類の燃焼に特有な310nmのOH発光、2)ガスクロマトグラフ(GC)を用いた反応中間生成物の分析、3)H原子共鳴吸光法(H-ARAS,120nm)を用いた。測定1では、種々条件で得られたOH発光の誘導期を整理するとともに、実験で得られたOH生成挙動を、ケムキンソフトを用いたコンピュータシミュレーションの結果と比較して、燃焼反応機構の検討を行った。測定2では、完全燃焼から不完全燃焼条件下で、異性体であるエタノール(EtOH:C_2H_5OH)の酸化反応生成物と比較検討した。TCD-GCによりCO,CO_2の生成量、PorapakQカラムを用いたFID-GCにより燃料成分のDMEまたはEtOHの未反応量およびCH_4,C_2H_4などが同定された。EtOHの酸素不足酸化ではCH_3CHOの生成が顕著であった。これらの結果から反応機構の検討を行うことができた。測定3では、DME濃度が10,20ppmと非常に希釈された条件での測定なので、酸素過剰条件でも燃焼は起こらず、酸化反応初期のH原子生成挙動を測定することができた。H原子は単調増加して一定値となったので、H原子生成の緩和時間を求め、コンピュータシミュレーションの結果と比較した。酸化反応初期過程においてはDMEの熱分解が重要な役割を果たしていることが確認できた。 つぎに、非経験的分子軌道法を用いることでジメチルエーテルの燃焼初期における重要な反応素過程中間体であるCH_3OCH_2ラジカルの熱分解および酸化反応について、エネルギーダイアグラムを作成し、遷移状態理論による速度定数の決定を試みた。得られた値を過去の実験値と比較検討し、計算の妥当性が確信でき、さらにその反応機構について考察することができた。
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