研究概要 |
FT合成は合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)から液体燃料を作る反応である。生成する重質液体燃料は,セタン価は高いが,オクタン価が低いため,そのままではガソリンとして用いることはできない。FT油からガソリンを製造するにはFT反応の後,生成物を分離して改質反応を行い,イソパラフィン含量を高くする必要がある。しかしゼオライトとFT触媒を複合させた触媒を用いると,生成する重質炭化水素は反応中にゼオライト上で分解・異性化を受け軽質化し,ガソリンに相当するイソパラフィンを多く含む液体燃料が生成する。すなわち通常は2段階反応が必要なガソリン製造が,ゼオライト複合FT触媒を用いることにより,一段階反応で行うことができる。 超臨界相は液層と気相の両方の性質を持つため,原料と生成物の早い拡散速度と反応熱の除去が期待され,また高い溶解度を持つため,触媒を被毒する物質を溶解除去する能力が高い。FT合成では水が副成し,ゼオライトが失活する可能性があるが,超臨界相ではゼオライトから水が溶解除去され,活性が高くなると考えられる。 FT合成触媒としてCO/SiO2触媒を用い,ゼオライト(ZSM-5)を混合しゼオライト複合触媒調製した。超臨界溶媒としてブタンを用いて,FT反応を行った。気相,超臨界相共にCO転化率は84%以上と高い。メタン選択率,炭酸ガス選択率は気相でそれぞれ38%,16%と高いが,超臨界相では17%,12%と低く,イソパラフィンの生成も気相で13%と低いが,超臨界相で22%と高いことがわかった。FT反応を超臨界相で行うとメタン選択率,炭酸ガス選択率が低く,イソパラフィン含量が高くなり,ガソリンとして使える炭化水素が多く生成することが明らかとなった。
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