研究概要 |
1)テンプレートイオン交換法によるZr/MCM-41の調製 メソ多孔質体の1つである,MCM-41を所定の方法に従い合成した。活性サイトを形成するZrイオン種をテンプレートイオン交換法で導入した。その後,残存している界面活性剤を空気流中で焼成処理することにより,Zr/MCM-41を得た。その他,Zr(n-C_3H_7)_4のn-propanol溶液を用いて,graft法にて固定化式Zr-MCM-41を調製した。 2)SnおよびZr担持触媒のキャラクタリゼーション 昨年と同様にMCM-41に担持したSnおよびZrの状態を調べるために,表面積および細孔径分布の測定を行った。Zr担持触媒では,Zrの担持によってMCM-41のメソ細孔が数nm縮小することがわかった。これは,ZrがMCM-41メソ細孔内に完全に均一に分散するのではなく,細孔入口近傍に比較的集中して担持されていることを示唆する。 SnおよびZr触媒に関して,吸着ベンズアルデヒドのアンモニア滴定法を用いて,SnおよびZr酸化物の分散性を評価した。テンプレートイオン交換法て導入し,さらにHClなどであらかじめ過剰のテンプレートを除去した触媒,graft法で固定化した触媒のSnやZr酸化物の分散性が高くよりMCM-41表面に広がっていると思われる。同じ担持量であっても活性点数の大きな触媒が調製されていると思われる。 3)SnおよびZr担持触媒上でのアセトフェノンの還元反応 アセトフェノンの2級アルコールを還元剤としたMPV還元反応を行った。生成物は唯一1-フェニルエタノールであり,選択的にカルボニル基の還元が進行した。上記アンモニア滴定法で高い分散性が得られた,SnおよびZr触媒で高い活性が得られた。工夫したテンプレートイオン交換法やgraft法が金属酸化物を高分散担持できる優れた調製法であることがわかった。さらに,graft法で調製したZr触媒で表面Zr1個当たりの活性,TOF,を測定したところ,他の調製法の触媒のTOFよりも高い値を示した。これは,高分散Zr触媒が単に活性成分の露出率が高いだけではなく,活性点1個当たりの真の活性も高いことを示しており,大変興味深い。他の反応への応用が期待される。
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