本研究では、正孔捕捉剤共存下、光触媒還元反応による硝酸イオン(NO^-_3)のN_2への還元無害化を検討した。まず、シュウ酸イオン共存下0.5wt%Cu-TiO_2を用いたときの懸濁液のpHの影響を検討した。pHを上げると還元生成物はNH_3からNO^-_2へと変化した。懸濁液をアルカリ性にすることで系内のプロトンが少なくなりNO^-_3のプロトン化が起こらなくなったためであると考えられる。光、触媒、正孔捕捉剤のいずれかが欠けると反応が進まないことから、この反応は光触媒的に進行していることを確認した。触媒にCuPd-TiO_2を用いてpH12で12h光照射するとNO^-_2は生成せず、代わりにN_2が生成し、光触媒によるNO^-_3のN_2への還元無害化が可能であることを見出した。つぎに、この条件下における窒素化合物の分布の経時変化を検討した。照射時間が短い領域でNO^-_2が一時的に生成するが、時間を延ばすとNO^-_2はすぐに減少し検出されなくなった。一方、N_2の生成は誘導期を伴って増加した。CuおよびPdの担持量の影響を検討したところ、TiO_2に対してCuが0.5wt%、Pdが1.0wt%のときに最大活性となり、いずれかの成分をさらに増加させると活性は減少した。また、基質をNO^-_2に代え、触媒としてPd-TiO_2を用いてアルカリ性条件下で光触媒還元を行うと、NO^-_2は誘導期を持たずにN_2へと還元された。このことはNO^-_2からN_2への還元においてPdが助触媒として機能していることを表している。NO^-_3の還元反応の進行と共にシュウ酸イオンの酸化生成物である炭酸イオンが系内に蓄積し反応速度が低下するが、pHスウィング等により炭酸イオンを除去することにより反応は進行することを確認した。また、金属の担持方法を改善することにより反応速度を低下させずにほぼ定量的にNO^-_3をN_2への還元することができた。
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