研究課題/領域番号 |
16560681
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
加藤 紀弘 宇都宮大学, 工学部, 助教授 (00261818)
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研究分担者 |
諸星 知広 宇都宮大学, 工学部, 助手 (90361360)
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キーワード | クオーラムセンシング / 高分子ゲル / シクロデキストリン / シグナル物質 / 細胞間情報伝達 / グラム陰性細菌 / アシルホモセリンラクトン / 包接複合体 |
研究概要 |
本研究ではグラム陰性細菌が生産する細胞間情報伝達物質をトラップする高分子ゲルシートの合成に成功した。グラム陰性細菌の細胞間情報伝達機構クオーラムセンシングでは、アシル化ホモセリンラクトンが菌種によらずシグナル物質として生産される。クオーラムセンシング機構により細菌は、宿主への感染、病原性因子の発現、バイオフィルム形成など多様な機能を制御していることが報告されているため、クオーラムセンシングの人為的な制御技術は重要である。そこで本研究では、クオーラムセンシングのシグナル物質と高い親和性を持つゲルシートを用いたシグナル物質濃度の制御技術を検討した。本研究では、このゲルシートを液体培地に共存させながらグラム陰性細菌の1種であるセラチア菌を培養すると、アシル化ホモセリンラクトン支配下にある色素プロディジオシン生産が大幅に抑制されることを実証した。この抑制効果はゲルシートの化学構造に依存し、条件を選ぶことで通常の10分の1程度までプロディジオシン生産量を抑制可能であった。これらの実験結果は、細菌のクオーラムセンシングのシグナル物質が有効にゲルシートにトラップされていることを示唆している。合成に成功したのは、異なるサイズの疎水性空孔を有するシクロデキストリンを固定化したセルロースエーテルゲルシートである。環状オリゴ糖であるα-シクロデキストリン及びβ-シクロデキストリン誘導体は、ホモセリンラクトン類のアシル鎖と包接複合体を形成可能である。培地中にシクロデキストリンを溶解させて細菌を培養すれば、細菌が生産したシグナル物質をシクロデキストリン分子が捕捉し、系中のシグナル物質濃度を低く抑制可能であった。シクロデキストリンを高分子ゲルシートに固定化した場合でも、未固定の場合と同様のクオーラムセンシング機構の阻害効果を確認できた。
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