研究代表者はカドミウムなどを特異的に結合することが知られていたタンパク質メタロチオネインが希少金属であるガリウムに対しても高い吸着特性を見出した。そこで、廃棄電子部品などからの回収が望まれている希少金属であるガリウムを効率よく回収するシステムを設計するための基礎研究として本研究に取組んだ。 まず、メタロチオネインダイマー遺伝子を構築し、大腸菌を用いてダイマータンパク質を発現した。それらを固定化したゲルを用いてガリウムに対する吸着特性を検討した。その結果、(1)メタロチオネインダイマータンパク質は1分子あたり、メタロチオネインの約2倍の吸着量を発揮すること、(2)ガリウム濃度0.2mM以下の低濃度領域での吸着性がダイマー化によって著しく改善されること、(3)ガリウムに対する吸着はラングミュア型の吸着平衡関係であらわされること、などを見出した。 そこで、大腸菌でのタンパク質発現効率の向上を目指し、遺伝子発現用プロモーター、精製用タグタンパク質を変更して新たにメタロチオネイン遺伝子のポリマー化を試みた。その結果、メタロチオネインテトラマー遺伝子を取得した。得られたテトラマー遺伝子の遺伝子配列は設計したとおりであることは遺伝子配列をシーケンシングすることにより確認した。また、テトラマータンパク質の発現については精製用タグタンパク質に対する抗体を用いたウエスタンブロットで確認した。テトラマータンパ質はインクルージョンボディとして大腸菌内に生産されることも明らかになった。テトラマータンパク質を大量に生産することで効率の良いガリウム回収システムを構築することが可能であることは本研究で示されたが、インクルージョンボディからのメタロチオネインテトラマータンパク質の精製とリフォールディング手法の検討が今後の重要な課題と考えられる。
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