研究概要 |
本研究期間で得られた成果は以下の通りである。 1)本セルラーゼの遺伝子上の特徴 酵素のクローニングを行った。 2)本セルラーゼの酵素タンパク質としての構造的特徴 硫安塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーによる精製により、本酵素は、3つの異なる分子量を有するセルラーゼであることがわかった。このうち、最も小さい分子量は18kDa、中間の分子量の酵素は61kDa,最も大きい分子量を有する酵素は96kDaであることがわかった。さらにSDS-PAGEにより、中間の分子量を有する酵素は、最も小さい分子量の酵素の3量体、最も大きい分子量の酵素は、最も小さい分子量の酵素の5量体であるものと推定された。しかし、最も大きい分子量の酵素は、5量体構造以外の糖鎖構造を付加していることが推定された。 いずれの分子量のセルラーゼとも、最適反応温度は50℃、最適反応pHは8.0であった。また、これらの酵素は、Tricorderma reeseiやTricorderma viride由来の市販のセルラーゼが50℃、30分間の加熱で、酵素活性が完全に失われるのに対し、本酵素(いずれの分子量の酵素とも)は80%の酵素活性を維持することが可能な耐熱性酵素であることがわかった。 3)被分解バイオマスの構造的特徴 本酵素は、一般にセルラーゼ活性測定に用いられる基質であるカルボキシメチルセルロースを分解することができないことがわかった。これに対し、黒餡由来のセルロースに対しては高い加水分解活性を有することがわかった。さらに、本酵素は、ペーパースラッジ由来のセルロースに対しても、黒餡粕由来セルロースに比べ活性は劣るものの、加水分解活性を有することがわかった。
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