研究概要 |
将来型の宇宙輸送機は再使用型でなければならない.再使用型輸送機の実現のキーテクノロジーは軽量化と推進系である.申請者は構造軽量化の手段として膜(フィルム)によるタンクの導入を提案し,輸送機の形態に応じたいくっかの概念を考案した.本研究ではその中で最も軽量化の効果があると思われる同軸型のタンクシステムを取り上げる.同軸型のタンクの利点は酸化剤と推進剤とに比重が近い液体を採用すれば,内側タンク壁に荷重がかからないことであり,内側タンクの主たる役目としては酸化剤と推進剤が混ざり合うことを避ければよい.その軽量化効果は内側金属タンク1個分の質量に近いものとなる.そのほか,スロッシング減衰が大きい,内側タンクのスロッシング・座屈荷重が大きな問題とならないなどが期待できる.一方で,膜タンクの導入による剛性の低下に起因する構造-推進系連成振動の安定性が設計上問題となるであろうから,その動特性を実験的に取得して,動的安定性を検討することが重要である. 17年度(3年計画の2年目)は1年目に製作した同軸型膜タンクを使っての振動試験と数値解析を行った.内側の膜タンクとしては剛なアクリル壁,適度に剛なカプトン膜,それに十分柔らかいポリスチレン膜を採用し,それらを水平加振台の上に搭載して正弦波加振,衝撃加振を行って応答の時系列を解析し,固有振動特性(固有振動数,減衰比)を計測した.計測には側面に電気抵抗で波高を計測する波高計,底面に圧力センサーを置いて2系統で応答信号を計測した.予測どおり柔らかい膜を使ったタンクでは十分な減衰が得られたが,そもそも,内側の系と外側の系が連成して明瞭な共振現象が現れないことが実験から明らかになった.また,液体のスロッシングと同時に膜の葉状振動が生じていることが観察された.このことが減衰を大きくしている要因であろうと推察される.最終年度(来年度)は縦加振による実験を行う.
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