研究概要 |
電気推進から噴射されるプラズマビームと地球高層大気の相互作用の研究を進める過程で、この現象を能動的に利用して中性大気観測に応用展開できる可能性を見いだした。励起源より放射されたイオンは地磁場に拘束され運動した後、高層中性大気と電荷交換衝突の結果電荷を失った高速中性粒子となって地球近傍から脱出する。これを観測機で捕らえ、発生場所・時刻・エネルギー損失を特定すれば磁力線に沿った広範囲の高層中性大気情報を瞬時に得ることができる。励起源の軌道周回に伴い短い時間で地球規模的データ収集も可能である。 初年度には、電荷交換生成装置を組み立て、実験室実験を行った。地球高層大気に見立てた窒素と酸素の混合気体にキセノンイオンビームを打ち込み、キセノンにだけ感度のある酸素の粒子密度を、窒素分圧に依存せずに特定することに成功した。 第2年次は、中性大気観測の形態・システム構成・各構成要素の性能決定のため数値シュミレーションを行い、観測システムの成立性を定量的に評価することができた。これによると、高度500kmからクリプトンイオンを放射すれば、磁力線に沿って1、000kmに渡る宇宙高層大気分布を、高度5,000kmに滞在する別の人工衛星から捕らえることができる。さらに、宇宙大気として最も大多数である原子状酸素に対し、この測定法の実地地上試験することを目指し、原子状酸素発生装置を作製した。原子状酸素は地球表面には存在しないので、酸素を放電により分解し、能動的に製造する必要がある。酸化により機器の性能が失われるため、マイクロ波を利用した無電極放電によりこれを実現した。
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